鳥獣保護法について解説し、野生動物の保護や駆除の際に必要となる手続き・対応をご紹介します。
鳥獣保護法とは?対象となる動物種
鳥獣保護法とは、鳥獣保護管理法とも言われており、正式には“鳥獣の保護及び管理並びに狩猟適正化に関する法律”のことを指します。
鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律 第一条
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=414AC0000000088&openerCode=1#A
この法律は、鳥獣の保護及び管理を図るための事業を実施するとともに、猟具の使用に係る危険を予防することにより、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化を図り、もって生物の多様性の確保(生態系の保護を含む。以下同じ。)、生活環境の保全及び農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、自然環境の恵沢を享受できる国民生活の確保及び地域社会の健全な発展に資することを目的とする。
つまり、豊かな生態系や農林水産業の発展、それに伴う私たちのより良い生活のために、野生動物を保護し、時には適切に管理・狩猟を行いましょう、ということです。
ただし、鳥獣保護法では全てのあらゆる生き物を保護・管理するわけではなく、対象となる野生鳥獣が決まっています。
鳥獣保護法で保護管理の対象となっている野生鳥獣は、鳥類・哺乳類に属する野生動物です。ヘビやトカゲなどの爬虫類、カエルなどの両生類、魚類、昆虫類などは対象に含まれていません。
平成14年の法改正によってネズミ・モグラ類と海棲哺乳類が含まれることになりましたが、ニホンアシカ・アザラシ5種とジュゴン以外の海棲哺乳類(クジラやイルカなど)、いえねずみ3種(ドブネズミ、ハツカネズミ、クマネズミ)は、保護管理の対象から除外されています。
鳥獣保護法で定められた規制
具体的な保護管理の方法としては、
- 捕獲する必要がある場合には必ず許可を取る必要があること
- 捕獲する際には土地の所有者に承諾を取ること
- 捕獲した鳥獣は放置しないこと
- 野生鳥獣を飼養する際は登録が必要であること
- 鳥獣保護区を指定・管理して野生動物の生息環境を保護・整備すること
- 狩猟が適切に行われるように特定猟具の使用を禁止・制限区域を設置すること
- 狩猟者は免許を取得して登録をすること
- 捕獲数の報告義務を設けること
などがあります。
都道府県に求められる役割と、事業者や市民に求められる役割
鳥獣保護法では、各主体の役割が明記されています。
都道府県は、国全体の施策はもちろんのこと、その地域の被害状況や課題などを踏まえて、専門家等からの助言を受けながら科学的・計画的に鳥獣保護・管理をすすめる役割があります。
要チェック!ニホンジカやイノシシは指定管理鳥獣です
特に、平成26年の鳥獣保護法改正によって定められた“指定管理鳥獣(ニホンジカ・イノシシの2種)”に関しては、必要に応じてニホンジカ・イノシシの管理目標設定や捕獲の調整を記載した第二種特定鳥獣管理計画を作成し、場合によっては目標達成のために必要な捕獲を行うことが求められています。
一方で、事業者や市民は、鳥獣被害を最小限に抑え、鳥獣を誘引しない取組に協力する事などが求められています。
具体的には、鳥獣が集まる原因となり得る庭や所有敷地内に生えた果樹(カキ、ビワ、クリ、アケビ、ノイチゴ)を放置せずに収穫すること、地区の生ごみが荒らされる可能性を低くするために、地域ごとに指定されているゴミ出しの時間や方法をきちんと守ることなどが挙げられます。
野生動物を捕獲したい場合の申請先。狩猟と許可捕獲の違い。
鳥獣保護法では、鳥獣捕獲等の規制として、鳥獣捕獲許可制度を設けています。国指定鳥獣保護区内での捕獲や気象鳥獣の捕獲など特別な場合以外は、都道府県知事もしくは市町村長の許可申請が必要になります(お住まいの都道府県によって異なります)。
捕獲申請は、都道府県知事もしくは市町村長が定めた許可対象者、対象種、捕獲数、猟法、場所などの基準に応じて審査されます。許可証が発行された場合は、捕獲時には必ず許可証を所持するようにし、捕獲後は速やかに結果報告をしましょう。
また、許可を受けて捕獲を行う“許可捕獲”と“狩猟”は、鳥獣を捕獲するという行動は同じでも、目的が異なります。
申請方法 | 内容 |
---|---|
許可捕獲 | 申請時に記載した特定の目的のために許可を受けて捕獲 |
狩猟 | 都道府県が実施する狩猟免許試験に合格して狩猟者登録をした者が、特定の狩猟鳥獣を定められた期間と方法で捕獲 |
狩猟は捕獲できる時期や方法、対象鳥獣が指定されているのに対し、許可捕獲は、危険猟法を行う場合以外は、申請時の期間や猟法、対象鳥獣が細かく指定されていることはほとんどありません。申請内容が許可されれば、内容通りに捕獲を行って速やかに結果を報告すれば良いのです。
ただし、許可捕獲も野生動物との接近や接触による危険は伴いますので、原則狩猟免許が必要なようです。狩猟免許を保持している方や専門家に依頼するのがより安全といえるでしょう。