動物の被害に困っている方のために、獣害に関する基礎的な知識をご紹介します。
獣害と害獣の違い
動物による被害に困っている方の中には、詳しい専門サイトは専門用語が多くて分かりづらいと感じている方もいらっしゃるでしょう。そんな方のために、頻出し、且つ、混乱しやすい“害獣”と“獣害”という言葉についてご説明します。
獣害とは
- 採食行動:動物(獣)がエサを食べる
- 探求行動:エサを探す行動
このような行動により、人間が受ける被害そのものを指します。
その被害は、被害を及ぼす動物種や原因によって様々で、主に農業被害と家屋被害、人的被害、森林・生態系被害の4つに分類されます。このページでは、4大被害についてご説明します。
害獣とは
- 被害を及ぼす原因となっている動物や種
- その可能性がある動物や種
これらを指します。
害獣は、野山に生息する野生動物であることがほとんどですが、家庭菜園や庭先の糞尿等の被害は、飼い主の管理が行き届いていないペットが害獣になっている可能性もあります。
農業被害
獣害と聞いて最も想像しやすく、一般的な被害と言えます。害獣の採食行動や探求行動により、直接的・間接的に農業が受ける被害のことを指します。
具体的には、農作物を食べられる、田畑の土や根を掘り起こされる、ビニールハウスを壊されるなどの被害があります。これにより、大切に育てた農作物が出荷できなくなることはもちろん、莫大な修繕費が掛かったり、定植・収穫サイクルが狂ったりする被害の可能性もあります。
農林水産省が平成29年に発表した調査結果によると、平成27年度の農作物被害総額は176億円となっています。
獣 | シカ | 猪 | サル | その他 |
---|---|---|---|---|
被害額 | 60億円 | 51億円 | 11億円 | 54億円 |
被害額の内訳では、シカ・イノシシ・サルの3種が、農業被害の半分以上を生み出していることになります。
主な対策としてフェンスや柵で侵入を防止したり、銃やワナで捕獲したり、忌避剤(きひざい)や超音波で接近を予防したりといった方法がありますが、効果的な対策のためには、設置するだけでなく日々の点検・管理や定期的な交換が必要です。
家屋被害
家屋被害とは、害獣が家屋や家畜小屋に侵入することが原因となる被害です。
具体的には、
- 天井が抜け落ちる
- 糞尿が溜まって異臭がする
- ダニ・ノミが家屋に浸入する
- 配線が噛まれて停電する
- 屋根裏や軒下に巣を作って棲みつく
このような被害があります。
以前までは被害を受ける家屋といえば、森や山にある木造家屋が多かったですが、近年では害獣たちも都市部の環境にうまく溶け込むことが出来るようになり、都心部での家屋被害も増加しています。
被害を及ぼす主な害獣は、ハクビシン、タヌキ、アナグマ、イタチで、人間も見逃すような小さな穴や細い隙間から家屋に浸入します。
近年では、本来日本には生息していないアライグマが、国内で野生化して家屋被害を生み出しているケースが増えており、性格の荒さや手先の器用さから深刻な被害を生み出す場合もあります。
害獣が屋根裏で巣を作って既に子育てを開始している場合やむやみに手を出そうとした場合は、防衛本能によって人間を噛んだり引掻かいたりする恐れもあるうえ、害獣の捕獲や駆除には特別な許可や資格が必要なため、被害を受けた場合は専門家や害獣駆除業者に相談すると良いでしょう。
人的被害
人的被害には下記のように、2つの被害に分けられます。
- 害獣の噛む・引っ掻くなどの行動から直接受ける
- 害獣が病気や菌、虫を媒介して間接的に受ける
害獣をはじめとする野生動物は、人間が暮らす環境とは全く異なる環境で生活しているため、人間には有害となる菌や病原体、ダニ・ノミなどを体中に付けて生活しています。
主な害獣はクマ、シカ、サル、キツネ、イノシシなどです。
山林や農地で鉢合わせたり民家に出没したりして直接被害を受ける場合もあれば、車で走行している最中に道に飛び出した動物と衝突事故を起こす場合、道に落ちている野生動物の糞尿からペットに菌やダニ・ノミが移った後ペットを介して人間に移る場合、家屋に棲みついた害獣の糞尿から感染する場合などが考えられます。
対策としては、野生動物やその動物が残した糞、死骸、道に散らばった生ごみなどを手で直接触らない事を意識することが重要です。
森林・生態系被害
森林・生態系被害とは、野生動物が自然環境の中で生活することによって、森林そのものや日本特有の生態系バランスが崩れてしまうことです。
具体的には、
- 気候やドングリ・木の実の不作などの自然環境による影響で動物種が異常に増減する
- 外来生物の定着により日本の動植物が減ってしまう
- 生態系バランスが崩れて自然のバランスが取れなくなる
- 草食動物が木の皮や繊維を食べてしまう
- 食害によって林業に悪影響を及ぼす
このような被害が考えられます。
食害に関する主な害獣はシカやウサギ、カモシカなどが挙げられます。
動物が被害を受ける側であることも忘れずに!
動物の生活環境である森林や生態系の被害に関しては、動物と人間だけの問題ではありません。気候や天候、植物や土の栄養状態、自然災害の有無など様々な原因が複雑に絡み合っているので、むしろ動物も被害を受けている立場であるともいえます。
森林や生態系被害は、農業および人的被害への前触れや目安にもなるといわれています。自然の中で十分に食べ物が得られない野生動物が、獣害となって農作物を食べたり、食べ物を探しに人の生活圏内に出現したりするのです。