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森林被害に効果的な対策とは?木の保護材の種類と効果

シカやウサギ、カモシカによる食害予防対策の1つである木の保護材について、その種類や効果、予算などをご紹介します。

木を保護する効果

近年全国的にシカの生息頭数が増加・生息地域が拡大しており、農林水産業に甚大な被害を及ぼしています。

林業においては人工林を構成するスギやヒノキの表皮を剥がして食べてしまう食害が特に著しく、林業の存続を脅かすだけでなく、森林の生態系破壊や土砂崩れの誘発など様々な問題を引き起こしています。

木の食害については、エリア全体を守る侵入防止柵の設置や忌避剤の直接散布などの被害防止方法がありますが、ここでは一本一本の木を確実に守る保護材についてご紹介します。

保護材で木を守ることには様々なメリットがあり、シカやウサギ、カモシカの食害を予防するだけでなく、冬の寒さや台風、強風などから木を守る役目も果たしてくれます。特に苗木や幼木は、小さな段階で厳しい自然環境にさらされると枯れてしまったり成長が遅くなってしまったりすることがあるため、木の成長促進にも大きな効果があると言えるでしょう。また、木の保護のことをウッドガード、ツリーシェルターと呼ぶこともあります。

食害防止に使用する保護材には、市販のものから個人で自作するものまで様々な材料を使用することがあり、どの材料を使用するかによって設置方法や予算、期待できる効果が変わってきます。次からは保護材別の特徴を挙げ、現場で使用するメリット・デメリット、設置方法、予算などを詳しくご紹介します。

保護材1:ネットや不繊布

木の保護材には、ネットや不織布を使用したものがあります。軽い上にかさばらないため持ち運びも容易で、価格も安く抑えることが出来ます。

メリットとして日光や風を遮らないことがあり、食害の被害を防止しながらも自然環境と変わらない生育環境を整えることができます。ただし、デメリットとしてネットをシカに噛み切られてしまうことがあるため、見回り点検やメンテナンスは必須で、噛み切られる心配がある場合には金属が編み込まれたネットを使用するという方法もあります。

設置方法の注意点としては、ネットの強度だけでなく留め具や支柱の強度にも配慮することが重要です。シカの足や角がネット引っかかり、驚いて暴れてネットが破れる・支柱や苗木ごと倒れてしまうという例もあるため、設置の際は支柱や留め具の強度も忘れずにチェックしましょう。合わせて、シカやカモシカだけでなくノウサギやノネズミなど小動物の食害も防止したい場合は、より目の細かいネットを選び、地面とネットの隙間を留める作業も徹底して行いましょう。

ネットや不織布を使用した保護材には市販されている商品もいくつかあり、強度や耐久年数、素材によって予算や特徴も様々です。

東工コーセン(株)からは、「チューブラ」と「幼齢木ネット」の2商品が販売されており、どちらも筒状タイプの幼木保護ネットです。両商品とも網目の細かいネットを使用しており、環境によっては10年ほど食害防止機能を維持できる耐久年数の高い商品です。チューブラは低価格の経済性を重視して高耐候性ポリプロピレン繊維という素材を使用しているのに対し、幼齢木ネットは環境への優しさとネット回収の手間を省ける利便性を重視し、トウモロコシから作られた生分解繊維ネットを使用しています。

デュポン(株)からは、不織布を使用した「ザバーン」という商品が販売されています。不織布はポーラス構造というたくさん穴の空いた構造をしているため、通気性・ろ過性・保温性に優れています。このような素材をじゃばら状に折り畳んだザバーンは、軽量な上に伸縮性があり、木の生育を邪魔することなく樹皮を保護してくれます。この商品の場合は紫外線対策も行われているため、一度の設置で長期間にわたる効果を発揮してくれます。

J-Worksからは「バークガードL」が販売されています。バークガードLは、ポリプロピレンという樹脂の一種をネット上に加工した商品で、保護したい樹木のサイズに応じて100cm高のMサイズと142cm高のLサイズを選べます。これらネット予算は素材や種類によって様々ですが、バークガードLに関しては100枚入りで33000円ほど、1本あたり約330円となります。

保護材2:金属

木の保護としてトタンや金網などの金属類を巻く方法もあります。強度もあり耐久年数が長い点がメリットで、プラスチックなどの便利な素材が出てくる前から長い間重宝されていた保護材です。

ただし、風を通さないデメリットもあるため、台風や強風に弱く雨で錆びてしまいます。現在ではトタンを使用することは少なくなり、より軽量化されたネットや不織布、プラスチックが代用されています。金属類の中でも金網であれば通気性がありますが、伸縮性はなく不織布やネットより重量があるため、苗木や幼木ではなくある程度成長して強度のある樹木に使用するなどの工夫が必要です。奈良公園のシカ食害対策には、金網が使用されています。

保護材3:プラスチック類

近年では木の保護にプラスチック類を使用することも多くなりました。

プラスチック類を保護材に使用する最大のメリットは軽量性と強度で、足場の悪い斜面でも重機を使用することなく設置できる点は、設置作業を行う林業関係者や業者にとって大きなメリットといえるでしょう。通気性や紫外線劣化の問題に関しては、穴を開けて通気性を良くする商品や紫外線劣化対策済みの商品を使用することで解決できます。

デメリットとしては、ネットや金属類と同様、メンテナンスや回収作業が必要なことがありますが、中には自然素材を使って製造された商品もあり、数年後には自然に帰るためゴミが発生しない・回収作業の必要がないというテープやチューブもあります。プラスチック類は、配合や素材を工夫することで様々な形に変形できるため、販売されている商品も大変幅広いです。

プラスチック類を使用した商品にはテープやチューブ、テープなど多種多様な商品が開発されているため、その中の一部をご紹介します。

ハイトカルチャ(株)からは、食害防止用のポリプロピレン製チューブ「ヘキサチューブ」が商品化されています。正六角形のシェルターに固定用リングと支柱が付属した商品で、地面に深く支柱を打ち込んで固定することで、シカやカモシカだけでなくウサギの食害防止にも効果があります。

東工コーセン(株)の「リンロンテープ」は、クマやシカによる食害防止専用テープで、耐久性が高く持ち運びと設置が簡単なテープです。樹木の周りを完全に覆う他の商品と比べて、リンロンテープは木の幹に間隔をあけて何重かに巻きつけるだけで効果が現れ、設置に特別な機材は必要ありません。

見た目はプラスチックテープとほぼ変わらないのですが、トウモロコシを原料にした生分解性のテープなので、5年前後で分解され、ゴミが発生しません。これらの製品の価格は素材や強度によって様々ですが、目安としてヘキサチューブは140cmタイプの10本セットで14000円ほど、1本あたり約1400円の計算になります。

ここでご紹介した商品の他にも、空きペットボトルを利用して保護材を独自製作したり、忌避剤の散布を行ったりする方法もありますので、対策予算や掛けられる労力にあった方法を選びましょう。

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