害獣対策の今と昔
私たち日本人は古くから農作物を育て、それらを食料とする農耕民族として栄えてきました。時間と労力をかけて大切に育てた農作物を野生動物に食べられてしまうことは今も昔も大きな問題で、同じように獣害問題に悩まされていたのです。そのような環境の中でまだ高等技術のなかった当時の人たちは、様々な知恵を使って獣害対策をしてきました。
その中でも、現代では見られなくなったものに猪追い(ししおい)があります。
猪追いとは田畑を守るための見張り番のことで、シカやイノシシから農作物を守るために農地の近くに小屋を作って、板を叩いて音を出したり笛を拭いたり夜通し見張りをしたりしていました。
その他に、木や竹、堀などを利用した侵入防止対策も行われていましたが、自然の素材であるために完全に対策できるほど強度もなかったため、猪追いのように人手を使ったものも多かったのです。
一方、現代では金属柵やネット柵、電気柵など様々な技術が進歩して人間が夜通し畑に待機する必要はなくなり、自動撮影カメラなどと併用することで、どんな動物がいつどのように田畑の周辺を動き回っているか?をより深く簡単に知ることができるようになりました。
また、捕獲方法にも時代による変化があります。以前は落とし穴や槍で動物を捕獲していましたが、現代では便利なワナや殺傷率の高い銃器、そして重量のある箱ワナや金属柵を簡単に運べる車やトラックなどの発達によって、人間の生活だけでなく狩猟環境も大きく変わったことが分かります。
近年の獣害問題は野生動物の生息数増加が原因となっている部分もありますが、こうして狩猟の方法や対策を比べてみると、効率的な侵入防止や捕獲のためにも使える技術は積極的に使いたいものです。
テクノロジーと獣害対策
ここではテクノロジーの発展によって大きく変化を遂げた獣害対策をご紹介します。先述した侵入防止や狩猟方法に関しては、実際のところ根本の捕獲手法としては大きく変わっておらず、性能の良い道具や強度のある素材が新たに生み出されて便利になったという表現が正しいかもしれません。これも大きな変革ではありますが、狩猟の精度が上がったり少人数での狩猟が可能になったりした裏にはテクノロジーの発展が欠かせませんでした。ここでは、それらの事例を具体的にご紹介します。
現代の獣害対策で最も特徴的なことは、体系的な調査やカメラ、センサー、GPS、ドローンなどによって多くの情報を手に入れられることです。
情報処理や記録、猟友会などの関係団体、インターネットの発達などにより多くの狩猟者が正しい情報を得て狩猟が身近になったことに始まり、対象鳥獣を様々な形で観察・追跡できるようになったことから、闇雲にワナを仕掛けたり待ち伏せをしたり個人で予測をしたりするのではなく、それらの正しい情報をもとにより効率よく狩猟をすることが可能になったのです。
最新の技術であるドローンを活用した獣害対策を行なっている企業もあり、ドローンに赤外線カメラを積んで上空から撮影する、動物が嫌がる音声を適切な場所で流すなどの研究・実証を進めています。柔軟に最新技術を取り込むことで、古くから人手を使って行なっていた獣害対策がより簡易的に、人手をかけずに対策できる日が近づいています。