狩猟を行う人に欠かせない狩猟者登録制度について解説し、登録の方法や条件などをご紹介します。
狩猟者登録制度とは
狩猟者登録制度とは、狩猟を行う都道府県に対して、狩猟者自らがその土地で狩猟をするということをあらかじめ登録しなければならない、という制度のことです。
例え、狩猟者免許を取得して既に猟具を持っている人であっても、狩猟者登録を行っていなければ実際に狩猟を行う事は出来ません。
これは、狩猟者および狩猟という行為自体を都道府県が一元管理し、各狩猟者が保持する猟具・猟場の把握、猟期・禁止事項・都道府県独自の保護区・猟禁止区域・休猟期などを確実に周知するための制度です。
狩猟とは、銃やわなを使用するため大きな危険を伴い、重大な事故にも繋がる可能性もあります。そのため、狩猟者は狩猟を行う都道府県で狩猟者である事を登録し、狩猟を行う必要があるのです。
ただし、狩猟者登録申請の際は狩猟免許の種類や番号、使用する猟具の種類、猟銃所持許可証の番号、狩猟する場所などの記入が必要になります。つまり、狩猟免許を保持していない人は狩猟者登録を行う事は出来ませんので、あくまで狩猟免許を保持した人のみが狩猟登録を行えるという事になります。
狩猟免許保持者の推移と近年の傾向
近年、害獣被害の増加に反して狩猟の担い手が減少しています。つまり、駆除対象である動物とその被害が増えているにもかかわらず、実際に駆除に必要な知識や技術を持っている人(狩猟免許保持者)は減少しているという深刻な状態なのです。
環境省の調査によると、平成26年度の時点で、日本国内の全狩猟免許保持者194,000人のうち129,000人が60歳以上の高齢者であると分かっており、全体の65%以上を高齢者が占めているということになります。
その他の年代は、50代が14.9%の29,000人、40代が9.8%の19,000人、30代が6.2%の12,000人、20代が2.6%の5,000人となっています。
ただし、狩猟免許を保持していたとしても狩猟者登録をしていなければ狩猟は出来ないため、何らかの形で実際に狩猟に従事している人は更に少ないといえます。
また、近年の傾向として変化が大きいものが、狩猟免許の種類別の保持者の比率です。
環境省では狩猟免許保持者数の調査と同時に、免許種別の保持者数の調査も行っています。
年度/免許種別 | 1種銃猟 | 第2種銃猟 | 網猟 | わな猟 | 19年度 | 59.4% | 1.3% | 17.0% | 22.7% |
---|---|---|---|---|
26年度 | 50.5% | 1.0% | 36.1% | 44.8% |
上記の表をみると、網猟免許とわな猟免許の取得率が上昇し、銃猟免許がやや減少しているということです。
日本国内すべての狩猟免許保持者のうち、銃猟免許保持者の99%以上が銃猟免許保持者だったのですが、20年後には91.5%に。30年後には76.5%、約40年後にあたる平成26年度には、51.5%にまで減少しているのです。
これは、猟銃を職業にすることが出来なくなった社会的・経済的背景と共に、農家の方自身が農地の作物を守り害獣を捕獲する手段として、銃猟より危険性が少なく取り掛かりやすい網・わな猟を選択しているという現状があります。
網・わな猟が簡単というわけではありませんが、銃の保持や保管には申請や審査、講習が必要だったり、網・わな猟免許以上の狩猟税を支払わなければならなかったり、網・わな猟では必要な無かった許可や認定、教習などに多くの時間とお金を要するのが現状です。
登録方法や条件、必要な書類など
狩猟者登録とは、猟をする都道府県ごとの登録が必要になります。登録に必要な条件としては以下にあげる2点です。
- 有効期間内の狩猟免許を保持していること
- 3,000万円以上の共済か賠償保険に加入。またはこれ同等の賠償能力を証明すること
実際に都道府県に登録する際には、次にあげる6つの書類が必要になります。
- 個人情報や狩猟免許の種類、猟具の種類、狩猟免許番号などを記載した狩猟者登録申請書
- 狩猟免許状
- 3,000万円以上の損害賠償能力を証明するもの
- 3cm×2.4㎝の写真2枚
- 登録手数料1,800円
- 狩猟免許の種類に応じた狩猟税
③損害賠償能力の証明は、損害保険会社の被保険者証明書や資金信用証明書、大日本猟友会の共済事業の被共済者証明書での証明が可能です。
⑥の狩猟税に関しては、第1種銃猟の場合は16,500円、第2種銃猟の場合は5,500円、網・わな猟の場合は8,200円が必要になります。
これらの必要書類や金額は都道府県によって異なる場合がありますので、詳細は必ず申請先の都道府県担当部署に確認しましょう。また、複数の都道府県に渡って狩猟を行いたい場合は、登録手数料や狩猟税は登録都道府県ごとに必要ですので注意してください。
都道府県の各担当部署で登録を行うと、狩猟者登録証と、狩猟者記章、鳥獣保護区等位置図(ハンターマップ)が配布されます。
この狩猟者登録証と狩猟者記章は、実際に狩猟を行う際に必ず携帯しなければいけません。また、ハンターマップには猟期や禁止事項の他に、その都道府県独自の保護区や猟禁止区域などの情報が掲載されているので、必ず目を通しましょう。
都道府県ごとの狩猟者登録先
狩猟者登録とは都道府県ごとに必要ですので、提出先になる都道府県によって担当部署や課の名前も違います。ここでは環境省の『平成26年度 狩猟者登録を受けた者による捕獲鳥獣数』という調査を参考に捕獲数の多い都道府県を抜粋し、狩猟者登録の具体的な申請先をご紹介します。
地域 | 申請先 |
---|---|
北海道 | 住所地の各振興局環境生活課、道内に全14ヶ所 |
福島県 | 各地方振興局県民生活課 |
茨城県 | 市町村により管轄が異なる。県北県民センター環境・保安課、鹿行県民センター環境・保安課、環境政策課県央環境保全室など全5ヶ所 |
群馬県 | 住所により申請先が異なり、渋川森林事務所、藤岡森林事務所、利根沼田環境森林事務所など全8ヶ所 |
長野県 | 住所の市郡に応じた各地域振興局林務課 |
岡山県 | 住所地を管轄する備前、備中、美作のいずれかの県民局農林水産事業部森林企画課 |
高知県 | 高知県鳥獣対策課 |
鹿児島県 | 登録者の住所地を管轄する各地域振興課・支庁農林水産部林務水産課、熊毛支庁屋久島事務所農林普及課のいずれか |
ただし、都道府県によっては申請都道府県内に在住しているか否かで申請先が変わる場合があります。
これらの情報は記事作成時の情報ですので、狩猟者登録を行う際は必ず各都道府県の最新情報を確認してください。